『松・美・心』
盆栽と写真の二人展
2019年1月10日から12日までの3日間、東京・銀座のArt Gallery M84にて、盆栽と写真の二人展『松・美・心』を開催しました。
相方となってくれたのは、2016年に『風の向こう側』でもご一緒した「ぼんさいや あべ」三代目の阿部大樹(あべ・だいき)さんです。
阿部さんとは、『風の向こう側』のあと、盆栽の主役中の主役である吾妻五葉松と私の代表作である『風姿』を一緒に展示したいね、と話していたのですが、こうして実現することができました。
美術ギャラリーのホワイトキューブに盆栽を、それも写真との組み合わせで展示するのは、稀有な(もしかしたら本邦初の)試みでしょう。阿部さんとは、前もって「この盆栽とこの写真を合わせよう」といった打ち合わせはほとんどしませんでした。お互い、どのような作品を持ち寄るかは阿吽の呼吸でわかっていましたし、実際に展示の現場で取り合わせてみて、そのとき起きる「アートの化学反応」を見てみたいという思いもあったからです。
「ぼんさいや あべ」に伝わる「空間有美(くうかんゆうび)」の流儀は、福島の吾妻山に自生する五葉松の樹形をお手本としつつ、日本古来の余白の美の考え方を核とした表現の手法であり哲学だと、私は受け止めています。盆栽の複雑かつシンプルな枝ぶりを、上下前後左右の立体感を考慮しながら、風通し良く見せてくれます。その姿からはまるで、松の枝を風が駆け抜けてゆく松籟が聞こえてくるような・・・。
その松の枝越しに、能楽のエッセンスを表現した作品集『風姿』を見ていただくことで、来場者の皆さんには、「見立ての美」の面白さを存分に味わっていただけたのではないかと考えていますが、いかがでしょうか。
懸崖の松の枝を透かして「竹生島」(向かって右の作品)を見る。すなわち「松越しに春の琵琶湖を眺める」という趣向の見立てです。
敢えて盆栽にはスポットライトを当てず、シルエットだけで見せる!「空間有美」の作りだからこそ可能な展示手法です。
この写真展の詳しいレポートは、京都写真美術館のWebサイトにも掲載されています。ぜひ御覧ください。